■
上のことを書いた後で、外来をしていました。
その方はいつも御夫婦でお見えになります。
おなじ時期に同じように癌がみつかり、お二人ともおなじ時期に手術をされた御夫婦です。
もう数年になるのですが、再発などはなく、いたってお元気です。ただ、御主人の方がときどき、不安になられるようで、安定剤を時々飲まれています。
その御夫婦の最大の悩みは、そういうこころの問題でした。
そういう不安をとってあげることがその方のため、と思って、再発はないことはもちろんですが、人生の考え方、しあわせについていろいろ話をしていました。
そのうちに、その方の生い立ちや今の考えや、いま何をしているかということが分かってきました。
いろいろやってきて、最終的に他人が幸せになってくれたらいい、というところだそうです。
そのかたはたくさんの土地もちだそうです。それは譲り受けたのではなく、人と違うことをしながら、自分の夢を探しながら苦労して手に入れたものだそうです。
それは結局、どこにももっていけない、それを使ってみんなが幸せになってくれたらいい、と思っておられるようです。
わたしも同感です。
この人のその思いを少しでも助けたいと思います。
この方の悩みは、この病院にくる医者がころころ変わることなのです。折角、なれてきたと思ったら別の医者、また、一から話をしないといけない。。。気分がうつうつするのも当然です。
わたしも以前から、大学の医局の都合とはいえ、自分の都合で病院をかわり、患者さんのそんな気持ちをたくさん置き去りにしてきました。とてもこころ苦しいものでした。
これからは、わたしに見て欲しいといって下さる方には、わたしのできることをできるだけ尽くしたいと思っています。
この方についてもそうです。
この方が土地をたくさんもっているから、という理由ではなく、まわりの人に幸せをつかんで欲しいとこころから思っておられるから、私はこの方のこころの病を取り除いてあげようと思ってます。
そのためにできることをひとつづつやってあげようと思ってます。
その方と話をしました。
はっきり申し上げて、私は3月までの予定でここに来ています。
ですので、これまでどおり、また主治医がかわってしまいます。けれど、@@さんの一つの大きな問題はそれに対して不安をもつことです。
わたしは@@さんの考えに大賛成です。これからもたくさんの人に幸せを与えて下さい。そのために、私でよければわたしにできることを協力させていただきます。
そう伝えるとたいそう喜んで下さいました。
こうやって小さい幸せの輪が広がるといいですね、と御夫婦と私ですごく幸せになりました。
言うことは簡単です。これをいかにこころを込めて、こころを決めてやりとげるか、そこで私の真価がとわれるのだと思ってます。