先日、看護婦さんから飛び込み(予約なし)で胃カメラをしたいといわれている方があるんですが、どうしましょう、といわれました。
いまの病院は、消化器内科の先生が大学から木曜日にみえることになっていて、胃カメラをその日に集める方針なんです。もちろん自分の患者さんは自分でやりますし、別に私が毎日やってもいいんですが、その先生の方が上手かもしれないし、わたしはここにずっといるわけではありませんので、この病院の方針に沿うことにしています。
それ以外の日には必要に応じて私がするという形をとっているので、今回そういう申し出があったんです。

「私でよければもちろん構いませんよ」ということでまずは診察させてもらうことにしました。

すると、カルテを見てびっくり、その病院まで2時間はかかるところで、その途中に大きい病院はあるのに、わざわざここまで来てくれてる患者さんなんです。
開口一番「カメラしてくれるか、してくれないのかはっきりしてよ。だめならよそにいくから。。」と少し怒っていらっしゃいました。
きっと、今日はカメラの日じゃないし、飛び込みだからもしかするとカメラはだめかもしれないとスタッフにいわれていたんでしょう。

数年前にこの病院で手術をしてもらって、その恩でずっとこの病院にきてくれてるそうです。
その律儀さにもびっくりしますが、そんな患者さんに対するこの病院の対応にもびっくりしてしまいました。

こんなに義理を尽くしてくれる患者さんになら、どんなに医者が偉かろうとも、お伺いを立てる前に、「もちろん胃カメラも、エコーもちゃんとしますよ、ただ、ふつうは予約制になっているので、すこし時間がかかるかもしれませんが、先生にやってもらいますから、お待ち下さい」くらいの応対があってしかるべきではなかったかと思うんです。

結局胃カメラもエコーもして、胃ガンの再発はないことを確認したのですが、私的にはこんなにも義理をとおす人ってどんな人なんだろうと思っていろいろ聞いてみました。

カツオ漁船にのっているそうです。
だいたい2月に宮崎の漁港をでて、カツオをもとめて、北上していくんですね。
11月まで、漁をして、12月に宮崎に戻ってくるそうです。

一回の漁で燃料費、食費をいれて100万くらい、で、水揚げは600から700万だそうです。一回の漁は2.3日、そう考えるとかなり儲かってますよね。

あの一本つりのおもしろさとか、船のうえでのまかないのこととか、いろいろ教えて頂きました。
いまは日本人の後継者がいないんですってね、東南アジアからの出稼ぎ者がたいてい2.3人はいるといってました。

「先生ものっけてやるよ」っていわれましたが、船酔いするのは目に見えてます。でも、1ヶ月くらいでなれるそうだから、1年くらい経験してみようかなとも思った一日でした。

その方はもうすぐ定年なんだそうです。定年したらなにをされるんですか?ってきいたら、小さな船をかって、好きなときに釣って、仲間とちびちびやりながら、昔話をするのが夢なんですって。
医者と患者という関係ではなく、白衣を脱いで、焼酎もって、南郷に今度あそびにいきますね、って約束しました。

すごく楽しみです。