昨日、今日と一泊のアルバイトでした。
昨日の夜はさほど忙しくなく、本も読めるくらいだったのですが、今日は朝の6時過ぎから5時まで、ほぼずっと外来や処置をしていました。

その当直で嬉しかったことが3つ。。

一つは本がじっくり読めたこと。

もう一つは、患者さんに私の信念をお話させてもらって、わかってもらえたこと。

もう一つは、ある患者さんとのやり取りで、自分の成長を感じることが出来たこと。

この3つです。

今年の目標に講演100回というのを立てましたが、なにもたくさんのひとの前ですることだけが講演ではないですよね。

きいてくれる人が一人でも居てくだされば、立派な講演じゃないかと、思えるようになりました。そもそも講演100回って何のためにしようとしていたんでしょう。一人でもわたしの話に耳を傾けてくれる人がいればいいんですものね。なにも偉くなることが目的ではないんですものね。。

その患者さんは、昨日、検診で小さい脳梗塞があるといわれたそうです。とくに麻痺などもなく、脳梗塞についてはなにかすることはなりません。しいて言えば、糖尿病を合併しておられるので、血糖のコントロールをきちんとすること、これから暑くなるので、水分は十分にとること、この二つでしょうか。。

この患者さんは、ちゃんと血糖はコントロールしているし、水分も十分にとっておられるとのことでした。

けれども、脳梗塞といわれたことがショック、それを友人に相談したら、早く手術をしたほうがいいとアドバイスされたとのこと、いわれてみればなんとなく頭が痛い気もする、一人暮らしだから倒れたら大変、、など、とにかく不安な気持ちでいっぱいでお見えになられたようです。

一通り、患者さんの不安なことをお聞きした上で、

「わかりました。まだ、お会いして10分くらいしかたっていない私が言わせてもらうのは失礼かもしれませんが、@@さんは、まわりからいわれたことで不安がいっぱいになってどうしたらいいのかご自身でも混乱しておられるのではないかと思います。

一つ一つ整理をしてみましょう。

小さい脳梗塞があったこと自体は事実のようです。ただ、それがもとで麻痺があるというわけではありませんし、なんら障害をもってはいません。

それは事実として受け止めましょう。それに対して出来ることを一つづつ解決してきましょう。

医療側に何かをしてほしいと行動にうつされたことは、非常に貴重で勇気あることだと思います。大半のひとは、まわりに相談せずに、自分で悩んでしまって先に進めないほうが多いですから。。

ただ。小さい脳梗塞に対して、手術するということは医学的にありえません。これは世界中、どこに行っても手術してくれるところはないと思います。

いま、医療者として@@さんにして差し上げることが出来るのは、この脳梗塞がひろがらないように、あるいは新たに出来ないように助言、あるいは薬が必要ならそれを処方して差し上げることくらいです。

そのためには、ご自身がご自身の生活や脳梗塞に対する考え方を変えていただかなくてはなりません。

いま、@@さんが出来ることってなんでしょう。血糖が高いと脳梗塞を起こす可能性が高いので、これをコントロールすること、そして、これから暑くなるので、脱水に気をつけること、これについてはいかがですか?

「最近は食事と薬でよくコントロールされています。HbA1c(血糖コントロールの指標です)も5台になっています。水は気をつけて、一日3リットル飲んでいます。」

すばらしいですよ、私の父よりも脳梗塞に対する予防処置をされておられますよ。どうぞ、自信をもって生活を送ってください。

折角の人生です。不安を抱えながら生きていくよりも、自信をもって、夢をもって、希望をもって生きていったほうが幸せだと思われませんか?

もちろん、わたしは脳の専門ではありません。だから、脳梗塞の予防法として、もっとほかにやったほうがいいことがあるかもしれません。ですから、それをその道のプロにちゃんと聞いてみてください。

そうお伝えしました。

診察室に入ってきたときの、眉間にしわのよった顔ではなく、本当に晴れ晴れとした顔で帰って行かれました。

医者をしてて良かったなあというか、人生について考えててよかったなあと思えた出来事でした。