■
ここに書くまでのことはない、、というか、あまりにプライベートなことなので、また奥さんに怒られるかもしれませんが、自分のなかで祈っていたり、あるいは、日記帳でその想いをつづったりするよりも、インターネットという、世界に向けて発信できる、拡声器みたいなもので祈ったほうが、なんとなく祈りが通じるような気がして、わらにもすがる気持ちで書きます。
今日は当直をしているのですが、本当は心ここにあらずなのです。
昨日の朝は、宮崎の南の端での外来勤務だったので、7時過ぎに家を出ました。奥さんは、私より早く起きてくれて、行きの車のなかでつまめるように。。っておにぎりをこさえてくれました。
そうやって、私を送り出してくれたあと、急にめまいが彼女を襲ったらしいのです。
わたしも外来をしていて、たまにめまいを訴えておいでになられる方があり、点滴、注射、内服で様子を見たりします。たいてい、これまでにも何度もあり、寝不足や過労など、本人も誘引を理解しておられることが多く、それほど慌てることはありません。
うちの奥さんの場合はどうか、、、というと、実は2年半まえに、同じような症状から(そのときは、めまいがもっとひどく、顔も上げられず、歩くことも、目をあけることもできない状態でした)、結局左の耳の聴力がかなり落ちてしまったのです。診断名は、突発性難聴。。
原因はいまだによくわかっていないようです。いろんな治療をしたんですが、聴力は元に戻らず、耳鳴りも続いている状態でした。
めまいに関しても、急な方向転換や特定の顔の角度の時には残っているようですが、日常生活に支障はなく、聴力も、左はだめでも、右でカバーし、問題はありませんでした。
2年半前、心配だったのは、反対の耳も同じことが起こるかもしれない。。ということ。。だったんですが、耳鼻科の先生によると、突発性難聴は、両耳に起こることはまずない。。とのことで、少し安心していました。
それが、昨日、突如彼女をめまいが襲いました。
彼女によると、前回とは反対の回り方で、地中に落ちていくような感覚だったそうです。その感覚は前回と同じだったらしく、「もしかして反対の耳も聞こえなくなるのか。。」と思ったそうです。
わたしに連絡するも、連絡がつかず、義母さんと大学病院に行きました。
私が家を出たあと、そんな大事が起こっているとも知らず、県南の串間というところで、外来をしていました。外来が一段落して、ふと携帯電話を見やると、「着信あり」の表示。。ボタンをおすと、奥さんの名前が表示されていました。
外来してるって知ってるのに、何だろう。。もしかして、心花が怪我したのか。。なんて折り返し電話したら、めまいがするから今から病院にいく。。とのことでした。
今すぐ帰ってあげたい。。という気持ちを抑え、役目をはたそうとしました。
患者さんを診るときは、頭から追い払おうとするのに、どうしても離れません。右耳も聞こえなくなったらどうしよう。。というより、そうやって不安に思っているだろうことが不憫でした。
突発性難聴にしても、メニエル氏病にしても、そういう不安やストレスなんかがさらに悪化させる一因になります。
ここは、奥さんの心を軽くしてあげることが僕の務め。。
と、心を切り替えて、
絶対大丈夫。。絶対よくなるから。。
と伝えてあげようと思いました。
メールにしようかとも思ったんですが、声を聞かせたい。。と思い、病院の中にいることを承知で電話をかけました。
大丈夫。。と伝えた後、もうひとつ伝えようと思っていたことがありました。
きっと、彼女が不安に思っているのは、右も聞こえなくなってしまうのではないか。。ということだろう。。そして、それを声に出すことさえも怖がっているだろう。。
だから、あえて僕のほうからいいました。
最悪、右も聞こえなくなったら、一生懸命手話を覚えるから。。なっふんの分まで、僕が聴いてあげるから。。だから安心して。。
それは、口先だけの言葉ではなく、「自分の一生をかけて、君を幸せにする」と誓った男の覚悟を込めた言葉でした。
その後は、何度電話をしてもつながりません。
勤務の時間が終わり、急いで帰途につきました。
結局、検査は昼過ぎに終わり、疲れたのと、めまいがひどいので、家に帰ってゆっくり休んでいたとのこと。。
検査結果は、確かに前回とは逆の眼振だけれど、右の聴力は正常で、左の聴力が悪化している。。との検査結果。
ただ、原因はわからないようです。典型的な突発性難聴とは症状が合わないようで、メニエル氏病が重なっているのか、もしかしたら聴神経腫瘍か。。と言われたらしいです。
右の聴力は問題なく、彼女が音の世界と遮断される、、という事態は回避されたのですが、今度は、聴神経腫瘍かも。。という心配が残りました。
これについては、来週MRI検査を受けることになったようです。
そして、薬をのんで、一夜明けた今日、まだかなりめまいは残っているものの、昨日に比べるとだいぶよい。。とのこと。
その言葉に後押しされるように、今日の当直にやってきましたが、心ここにあらずです。
聴神経腫瘍はまず、ありえないと思うのですが、その根拠は?といわれると、次の句が出ません。
とにかく今できることは、
聴神経腫瘍ではありませんように。。
めまいがなくなって、奥さんに笑顔が戻ってきてくれますように。。
そう、心から祈るよりほかありません。
いや、笑顔を戻してくれ。。って贅沢なことは言いません。聴神経腫瘍でさえなければいいです。
お願いします。わたしから奥さんを取り上げないでください。。