腹痛の女の子

年末に腹痛を主訴に当院の内科を受診、X線、超音波で便秘によるものではないか、下剤をのんで、また、腹痛がおこるようなら、消化器科か小児科にいくようにいわれたという13才の女の子が再診されました。

こういういきさつですけど、先生どうします?っていわれて、私でよければ診ますよ、ということで診察させてもらいました。

診察室によぶと、お父様も一緒に入ってこられました。

珍しいなあと思いながら診察します。今までの経過、お腹の感じからすると確かに、便秘かあるいは過敏性腸炎かな、という感じです。

念のため超音波をさせてもらいましたが、思い当たる臓器に異常はないようです。

それをしながら、将来の夢をきくと、動物のためになる仕事をしたいのだそうです。
「いまのうちからやりたいことから夢があっていいね、夢をもってると、その周りの情報がたあくさん入って来て、きっと夢が実現するよ、そんな情報が入っている内に本当にやりたいことが見つかるかも知れないから、がんばってね、っていいながら、お父さんを呼び入れ、超音波をみながら説明をはじめました。

するとお父さんが、「うちは父子家庭なんですよ、おまけに私の仕事も上手くいってなくて、、だから子供の腹痛は精神的なものもあるのかもしれません。。」といわれました。

見ず知らずの私にそんな告白をできるお父さんもすごいと思いました。

そこで、検査が一通りすんで、

「もう13才だから、一人の人間としてお話しするね。
お腹の痛みの原因で、一番心配なのは、なにか治療しないといけないような病気がないかということだけど、検査をした限り、それはなさそう。じゃあ、この痛みは何かといわれると、便秘やいろんな悩みを体の中にためてしまって、お腹の調子を悪くしてしまうことが考えられると思う。

きみのことをよく知っているわけではないから、聞き流してもらってもいいけど、はっきりいって、お母さんがいなくて、お父さんと二人で暮しているのは、普通ではない、けど、それを不幸ととられるかどうかは、君のこころの持ち方次第。

平日に子供の心配をして病院についてきてくれるお父さんはざらにはいない、こんなにおとうさんに愛情を注いでもらえる子はいないよ、僕からみても、君は幸せだなあと思う。

みんなそれぞれ悩みはある、ぼくだって、医者という普通のひとはうらやむ仕事をしてはいるけど、いろんな悩みがある。
それを悔やんでたら、せっかく生きているのにもったいない、本当は楽しめることだって楽しめない。

自分の現状は現状でちゃんと向き合って、あしたに向かっていかなきゃね。

そうしてたら、お腹の痛みもなくなるはずだから、ちゃんと規則正しく御飯をたべて、ちゃんと笑って、悩みがあったら、みんなに相談して、たのしくいこう。

それに、13才で動物のために働きたいというはっきりした夢があるよね。
動物達は自分で症状がいえないから、お医者さんが症状を汲み取ってあげないといけない、いま、お腹がいたいっていう経験はきっと、将来役にたつと思うよ。

なんだって自分のためって思うと、人生楽しくなるから、がんばってね。

と送りだしました。
ちゃんと話を聞いてくれました。お父さんも感謝してくれました。日本も捨てたもんじゃありません。