さずがです。

76才のかたで、犬に咬まれていま、外来に来て下さっている方がいらっしゃいます。

普通の外傷であれば、外来にきて、消毒させて頂くのは必要最小限にしようとしているのですが、ケモノ傷の場合は化膿する可能性があるので、申し訳ないけれども、できるだけ来て頂くようにしています。

けど、折角来て頂くからには、ああ、きてよかったな、と思ってかえって頂きたい、といつも思ってます。

今日はゆっくり時間があったので、その方に、生きがいについてお話を伺うことにしました。

「できればあと24年くらい生きて100才まで、生きて頂きたいなあとは思ってますが、人間だれでも死んじゃいますよね、失礼を承知で言わして頂くと、76才というのはもうすぐ平均寿命ですよね、そう考えると、あと数年かもしれませんね、あと、数年をどう生きていこうとされているのか、もしよかったら人生の先輩として教えていただけないでしょうか?」

はじめは、不思議そうな顔をしておられましたので、(確かにこんなことを聞く医者はあんまりいませんよね)「実は最近、自分の中でどう生きるか、何がしあわせなんだろうって考えることが多いんです。なんせ、まだ30そこらの若輩者なので、まだまだわかりません、@@さんみたいに70過ぎまで生きていられればいいんですが、あした死んでしまうかもしれません、そのためには、今日一日を一生懸命生きてみたいんです。もしよかったら、教えて頂けませんか?」

「わたしには、もうこの年ですから、何かをやりたいというのはありません、ただ、今は娘と娘婿と孫二人といっしょに何も考えずに過ごしてます。このだんながとってもいいひとで、本当に感謝してます。そんななかで暮らせる、ということで本当に私は幸せなので、これ以上何かをしようということは考えていません。だから教えられることは何もありません。」といって頂けました。

すこしまえの私だったら、「ああ、何もないんだ」と思っていたかもしれませんが、確かに76才の方に何かをしようとしている情熱を期待してもそれは無理ですよね、76才の幸せって、そういうことなんですよね、ただ、76才でもそれまでの生き方の積み重ねがありますから、使命感をもって、何かをしようとしていることに生き甲斐を感じられるかたもあるでしょう。

本当に十人十色なんですね、大切なのは、感謝する心なんだ、そうすると心が幸福になるのかも、人間として幸せになれるのかも。。と思いました。

どういう縁なのか分かりませんが、私のところに来て頂いて本当にありがとうございました。

ひとってすばらしいです。

もちろんにゃんこもすばらしいです。(まめぞうさん、帰ったら遊ぼうね)