泣けてきた。。

今年のはじめに、あるおばあちゃんを息子さんがつれてお見えになりました。
年末まで腰痛で入院していて、退院したのはいいけれど、家に帰って、いろいろ動くとすぐ腰がいたいという、ちゃんとなおすまで病院もおいておいてくれてたらよかったのに。。との話し。腰が曲がるものだから、ろっ骨のあたりも痛くなったようで、整形外科の先生は、腰ではなくてろっ骨のところが痛いらしいから、外科に診てもらってって言われたらしく、わたしのところにカルテがまわってきました。

客観的にみると積極的な治療は必要無さそうです。(年末の入院でお腹も含めて検査はしてありましたし。。)

さて、と、考えました。

このまま外科的にも問題ありません、家でがんばってくださいと突き放してしまうものか。。そこで、おせっかいの虫がうずきました。

「確かに腰痛、それに伴う、ろっ骨のところの痛みはありそうです。もし、これが若い方であれば、問題ないですよ、とシップをお渡しして帰って頂くところです。

しかし、わざわざお仕事を休んでまで病院につれてお見えになった息子さんのお気持ちもよく分かります。自宅で見ておくといつこけるか不安であったり、すぐ腰が痛いだとか、もう死ぬとか、言われるんだと思います。

自宅でみるっていうのは大変ですよね。ただ、おかあさんは長くてもあと10年でしょう、もしかするとあと1,2 年かもしれません。そのことはよく考えてみて下さい。もちろん、道義的なものを持ち出して、自宅で見ろ、なんて押し付ける気は全くありません。

家族で、おかあさんとあと数年の命をどう向き合うのか一度話してみて下さい。その方針に私達はできることをサポートしようと思います。

今回は外科医としてではなく、ひとりの人としてお母さんをお預かりします。

みなさんで話し合われて、結論が出たらまたゆっくり話しましょう。」

ということで入院された患者さんでした。

その面談を本日行いました。結局自宅でなんとか見ていく、家族の都合が悪い時は、病院などの施設を利用する、というものでした。

ただ、私からの注文は、あれをしたらいけないとか、転倒しないように気をつけろとか、細かい小言はやめてください、お母さんにできること、出来たことをみつけて誉めてあげて下さい、そして、できるだけ、おかあさんにできる仕事をつくってあげて下さい、好きなことをできる喜びを与えてあげて下さい、とお話ししました。

話をきくと歌が好きだそうです。できれば家族でカラオケ大会でもやってください、戸お願いしました。

その後、御本人も交えて息子さん、お嫁さんとお話ししました。

いつものように何気ないことから話をしていきます。

「もうすぐ家に帰れるそうですよ、いい息子さんがいてよかったですね」

と切り出すと、「ええ、そうなんです。いい息子なんです」

「お若いころは何をしておられたんですか?」

「主人が出来たお人で私には外のことをなんにもさせなかったんです。すごく幸せでした。」

「家の中で何をしておられたんですか?」

「はい、ただ、ただ、子供達が大きく、健やかに育ってくれればいい、ただそれだけを願ってました。お陰さまでこんなに立派になって、仕事もできるようになりました、本当にありがたいことです」

よかったですね、と言うのが精一杯でした。

一生懸命子供を育ててきたんです。死ぬ時は「ああ、生きてきてよかった。」と思ってほしい、と心から思いました。