連帯保証人

外来で、あるいは、病棟でいろんなひとと話をしていると、どこからか聞き付けて、日高は、どうも相談にのってくれるらしい、ということで、患者さん、家族に限らず、意見を求められることが多くなってきました。

医者としての守秘義務以外に、人間として、個人が特定できるようなことは公表するのはためらわれます。
けれど、同じような悩みを持っている人がいるのなら、わたしの意見で少しは心がはれるのなら、また、その相談した人が、あとで、このまめぞうをみて、ああ、こういう風にいってたな、とあとで読み返してもらえたらいいな、と思ってます。

その方は、御主人が連帯保証人になって、その債務者が、いなくなってしまったとのことでした。

それは数年前で、その時は、親戚のことだし、印鑑をついたのも事実だし、仕方ない、と思って、毎月決った額を払い、それまでのっていた高級車をうり、なんとか、切り抜けたそうです。

それで安堵していたら、今度は、御主人の御兄弟が会社を経営していたらしいのですが、それが破綻してしまい、書類上共同経営者となっていた、御主人に債務がきたとのことでした。

その方の親戚のかたは、もう、そんな家とは縁をきれ、といわれていたり、御主人もかなり落ち込んでいて、これ以上迷惑はかけれないと、好きにしていいよ、といってくれているとのことです。

でも、子供もいるし、どうしようか悩んでいる、とのことでした。

「わたしの意見が正しいとは思っていません、それに、そんなに人生経験があるわけでもありません。それでも、意見を言わせて頂くことができるというのであれば、まず、債務があるということは事実です。これは、払わないといけませんよね。

ただ、@@さんだけが背負うのではなく、御兄弟、御両親を含めて、御主人の親戚一同で話し合って、負債を分け合って、それに応じた分を払ってはどうでしょうか?

もし、御主人の御両親や近しい親戚が、うちには関係ない、書類でそうなってるんだから、@@さんところで全部払ってよ、というのなら、はっきりいってその家とは関係を切った方がよいかもしれません。

次に、@@さんが、御主人とこれからも一緒にいきていきたい、この人をサポートしてあげたい、という気持ちがあるのなら、いまは御主人は辛い時期です、ゆっくり話し合われることをお勧めします。お二人で、問題点を整理して、できることからすこしずつ始められたらどうでしょうか?

もし、そのモチベーションがもう、ないのであれば、離婚という選択もいいと思います。

最近思うことに、原因と結果は対になっているというものがあります。

今回、離婚するという結果になった場合、それまで、御主人が家庭のことを中心に考えてきていなかったということが原因かもしれません。

家庭を大切にしたい、というのであれば、そう簡単に連帯保証人にはなれないと思います。それも、一度だけならまだしも、話をきくと、二度、三度、ということであれば、家庭のためという信念より、単に、友だちにいい顔をしたいために、印鑑をついてしまったのでは、と思ってしまいます。

御主人にとって、大事なのは、この結果ではありません、この結果から先の将来なのです。
今回の離婚という結果によって、何かに気がつけば、その方が幸せかもしれません。

もちろん、今のうちに、家庭の大切さに気がついて、一から家族のために再出発して下さるのが、子供さんにとってもいいことですが、そのためには、十分話し合って、お互いに何が大事なのか、何のためにいきていくのかを、再認識する必要があるかもしれませんね。

債務がいくらなのかわかりませんが、お金はいつか必ず、払い終えることができます。心を一つに、家族で何かをやり遂げるという、その過程は、何ごとにも代えることのできない貴重なことだと思います。そのための授業料と考えることもできますよね。

私に思い付くことといえば、これくらいしかありません。

このようなことを考えさせて下さる機会を与えてもらって、本当にありがたいと思ってます、それに見合った答えを、差し上げることが出来ないのが本当に申し訳ないと思ってます。

何ごとも上手くいくようにお祈りします。」

そう申し上げました。
本当に、外来なり、病棟なりで、人生のあり方について、自分の考えを表に出していなかったら、こんな相談はうけなかったでしょう。そして、こんなことを考えることもなかったでしょう。

本当に有り 難いことでした。

この家庭が、この困難を乗り越えて、本当の幸せをつかめるようにお祈りいたします。