腕を組みながら朝日を眺める。。

こんにちわ。

結局、昨日の救急病院での当直は一睡もしませんでした。ベッドのシーツは、まっさらのまんま。。

患者さんが多かったわけでも、何か仕事をしていたわけでもなかったのですが、なぜか眠れませんでした。

歯が痛い時は、他に何もすることがなくて、じっと横になって、気がついたら眠って、なんとか時間を稼ごうとしていたんですが、その時に寝溜めしたんでしょうね。。
それに、なにより、歯の痛みを堪えなくていい。。というのが、とっても嬉しくて、つい、いろいろと書き物をしておりました。

そうこうしているうちに、午前6時になりました。

当直室は4階にあるのですが、ふと、外を見やると、さっきまで、真っ暗だった空が、うっすらと東の空から明るくなってきていました。

『あと一時間かあ。。』

7時までの勤務です。
あと一時間だけ眠るのも、寝過ごしてしまいそうだし、かといって、さらになにか書き物をするのには、頭が一杯一杯だし、、ということで、朝の空気を思いっきり吸い込もう。。と約1メートルのガラス戸を飛び越えて、ベランダに出ました。

救急病院では、血を噴くような外傷の患者さんがいつ来てもいいように、上下とも緑の手術着に着替えます。

それだけではかなり肌寒かったので(吐く息が白いんですよ。。)、その上から白衣を羽織って、ベランダの端に近付いていきました。

眼下には20軒くらいの小さな集落、そのまわりにはたんぼ、野球場が見渡せます。

朝になると、かなり温度が下がるためでしょう、もやがそれらをずーっとおおっています。

果ては、鹿児島の櫻島も見渡すことができます。

東のほうをみやると、奥さんと夜景を見に行ったこともある、思い出の金見岳がそびえています。その山の端がすこーし白んで来ている程度です。

そこに立って、初めのうちは、

『寒いし、もう暫く部屋の中にいて、太陽がでてくるくらいのときに、もう一回出てこようかな』

とか、

『どうせ、日の出をみて、ああ、神々しかったな。。とか、新鮮な気持ちになれた。。とかって思うだけだし、日の出まで40分もぼーっとしているのも、もったいないな。。』

なんて、考えていたんですが、そういう分かったつもりになっている自分や、目に見えないものをおろそかにしようとしている自分、つまり、朝日という『答え』だけを求めようとして、そこに至るまでのプロセスをおろそかにしそうとしている自分に、はっとしてしまって、とにかく、何も感じなくてもいい、ただ、ぼーっとしててみよう。。と思い直して、ぼーっと立ってることにしました。

そう考えて、自分を客観的にみてみると、『腕を組んでいた』んですね。

医学部の臨床実習のときに、教授をはじめ、スタッフと一緒に患者さんのところを回診してまわるのですが、その時に注意されていたのが、

『腕をくむな』

腕をくむって、自分の殻に閉じこもっている心理状態をあらわしているらしいです。

自分に自信がないから、質問しないでほしい。。

恥をかきたくないから、こっちに注目しないでほしい。。

というのを、さも分かったように腕を組んでごまかしてしまうんです。

ちょうど、今朝の気持ちはそうだったのかもしれません。

朝に感じる気持ちはもうすでに分かっているんだ。。

朝日をみる効用なんて重々承知の助さ。。

自分は結構分かってるんだから、今さら、朝日を見て気付きがあるはずはないさ。。

なんて、殻に閉じこもっていたんですね。

いけませんね。

両手を広げて、大きく深呼吸して、さあ、何でも受け入れますよ。どんなことを感じるのか、楽しみにしてますよ。。って、大空にむかって、大自然にむかって、そして、自分の感情に向かって、小声で叫びました。(他の先生は別室でねてたので。。)

そうすると、いままで、聞こえてなかった、小鳥のさえずりや、からすの鳴き声、気持ちよさそうに飛んでいく鳥のすがた。。(名前が分からないところが知識が足りないところです。。とほほ)そんな光景がなんともいえず、心を揺さぶってきました。

そして、先程は、何も感じていなかった『もや』が、海原にみえてくるんですね。いわゆる、雲海。。そして、先にみえる櫻島や名前の分からない山々が海に浮かぶ島に見えてくるんですね。
そして、その山を見ながら感じたこと。。

櫻島は近くでみると、雄大で、鹿児島県民の心の支えとなっているシンボルではあるけれど、こうやって、離れてみると、小さい山にしかみえない。

それに対して、この近くの金見岳は、この近所の人しかしらない、有名でもない山なんだけど、こんなに立派で、こんなにも堂々としている。。

遠くをみると、櫻島しか見えないけど、本当はこんな、小さくても存在を十分にアピールする山々は確かに存在するんだよなあ。。ってこと。。ただ、遠すぎて見えないけど、確かにそこにある。。

今の自分は。。。

遠く離れた『百咲』からは、まったく見えない存在。

それどころか、まだまだ近くに寄っても、こんもりもしてないような存在。



けど、けど、必ず、必ず、少しづつ、少しづつ、土を盛り上げていって、いつの日か、どこからでも、どんな時でも、

『お父さんだ』

って見えるような存在になりたい。


けど、それは、やっぱり、山がいい。。

人工的に、高く高く作りあげたタワーやビルじゃなくて、やっぱり山がいい。。

そう思いました。


結局、あと3分くらいで朝日が出るんじゃないか。。というところで、患者さんがおいでになって、呼ばれてしまって、直接的に朝日を拝むことはできませんでしたが、それ以上に、得るものが多かった朝でした。

もっといろいろ感じたんですが、ちょっと長くなり過ぎました。ここで、いったん筆をおろします。