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こんにちわ。
いつも偉そうなことばかり書いていたりするわたしですが、医者としての知識や経験はまだまだなんです。
だからこそ、毎日毎日勉強しよう。。と思えるのですが。。
ただ、一番迷惑を被るのは患者さんですよね。
自戒の意を込めて、先日の出来事を振り返ってみます。
ツルルッ
(おっとまたか。。今日はゆっくり休む時間もないな。。)そう思いながらも、気分を盛り上げて受話器をとった。
「はい、日高です。」
「患者さんです、よろしくお願いします。」
「そうですか、わかりました。それにしても今日は多いですね。」
今日の当直先の急病センターは、電話ではどんな患者さんがお見えになったのか情報を与えてくれない。とりあえず、診察室にいって、どんな患者さんかを知ることになる。
ついさっきロッカーにかけた白衣を上から羽負い、とぼとぼと診察室にむかう。
そこには、心配そうなお母さんと、ひざの上にだっこされた男の子。
(幼稚園児かな。。この年なら、肘内障かな。。ちょちょいって整復すればいいや。。楽勝楽勝。。)
なんて思いながら席につき、問診票をみると、6歳、症状は『ひざが腫れてきて、歩けない』とのこと。
(そううまくは行かないよね。。)なんて思いながら、おもむろに痛いという右ひざを見てみる。たしかに、腫れているし、関節腔内に液体が貯留しているみたい。
いわゆる「ひざに水が貯まった」状態である。
ご高齢者であれば、変形性膝関節症によるものでしょう。。ということで、液を穿刺したりするところだけど、目の前にいるのは、6歳の子供。。原因はなんだろう。。
「なにか変わったことをされました?」
「昨日は遠足だったんですよね」
その言葉にすがりつくことにしました。
「ああ、きっと遠足でひざが無理をしたんでしょうね。無理をしたから関節のところで炎症を起こして液がたまったんではないでしょうか。大人だったら、針をさして液を抜いたりもするんですが、子供ですからね。シップを貼って、安静にしておきましょうか。」
心配そうにしていたお母さんも、変な病気ではないだろう。。といわれ、安心されたのか、表情は弛んでいた。緊張がほぐれたせいか、日頃疑問に思っていたらしいことをいろいろと質問され始めた。
「日頃から落ち着きがないんですよ」
「小さいころにけがしたところがあるんですけど、痕に残りますかね。。」などなど、、
その都度、分かる範囲で答えていたが、
「ぶつけた記憶はないらしいんですけど、ここに内出血があるんですよ」
と右の足首を突き出してきた。
たしかに内出血である。しかし、ちょっと違う。ちょっと考えて
「昨日の遠足で、遊んでて知らずにぶつけたのかもしれませんね。そのうちに、消えますよ。」
そう笑ってみせた。それでも、なんか引っ掛かる。
(確かに内出血だけど、見ようによっては湿疹にもみえるし。。そうだ、小児科の先生に診てもらおう)
ここの急病センターは外科のほかに、内科と小児科のドクターが待機している。
「きっとなにかの打撲とは思いますけど、念のため、小児科の先生に診てもらいましょうか」
そういって、看護師さんにカルテを渡し、その間にやってきた別のカルテに手をのばした。
その患者さんをみた後に、気になって小児科の診察室をのぞいてみた。
「検査してみないと分からないけど、アレルギー性紫斑病だね。ひざも腫れてるし、こりゃ、入院しなきゃいかんね」
そう、足首の内出血は打撲でもなんでもなく、アレルギー性紫斑病の症状だったのである。ひざの腫れも、無理をしたとかなんていう素人みたいな診断ではさらさらなかったのである。
さっきまで、「変な病気ではないと思いますよ」なんて言われてニコニコしていたお母さんも顔が引きつっている。
「ひざの腫れは遠足で歩いたから。。」とか、「足首の内出血は打撲か?」
なんて書いているカルテに、小児科の先生が付け加えている。
顔から火が出る程、恥ずかしかった。そのまま黙って自分の診察室に引き返そうかと思った。
けど、曲がりなりにも自分で出した結論には、自分で責任を持たなきゃ。。
そう気持ちを持ち直して、小児科の先生に「(診察)ありがとうございました。アレルギー性紫斑病ですか、全然思い付きませんでした。勉強になりました。」
そして、お母さんに「打撲なんかじゃなかったですね。ごめんなさい。しっかり治療してもらって下さいね」
やっとの思いで言葉を出すことが出来ました。
あのままシップで様子をみましょう。。なんて家にかえしていたらどうなっていたんでしょう。
「知らない」ということは、本当に犯罪ですね。
ニ度と同じ間違いをくり返さないように、そして、そうやって見逃される患者さんが一人でも少なくなるように、自戒の意味を込めて書き残しておきました。