続きです.

こんなに小さかったのに。。

「先生、アッペの患者さんですけど、13時50分搬入でいいですか?」

「いいですよ。じゃ、いつものように腰椎麻酔の準備、よろしくお願いしますね」

PHSの「切」ボタンを押しながら、ひとつため息をついた。

『さて。。と。。搬入が14時前なら、執刀は14時半くらいかな。。
ちょっとアッペの走行がややこしそうだったのと、太りぎみだったから、一応30分くらいって見積もって、15時か。。
術後の標本整理と入院患者さんを一通り見て回って、16時。。

18時には十分間に合うな。。』

と頭の中で時間の計算をしつつ、自分の携帯電話を取り出す。着信履歴のなかから,妻の名前を選択,ピッ.

「あ、もしもし。
アッペの患者さん、もう少ししたら搬入になるよ。
手術が終わるのが15時くらいだろうから、全然大丈夫だと思うよ。
うん、わかった。また、電話するね」

「お?奥さん?
今日、予定が入ってたの?」

となりの机に座っていた上司の先生が電話を聞き付けて声をかけてきた。

「ええ、そうなんですよ。今日、むすめの夏祭りで、親子で行くことになってるんですよ」

「ふーん、たまには子供さんと過ごしてあげんとね。。今週は特に忙しかったもんね。奥さんはなにも言わない?」

「そうですね。うちは共働きだから、お互いの生活を守ってる。。って感じでしょうか?最近は娘も、保育園を自分の仕事だと思ってるみたいなんですよ」

「ま、今日は、早く終われるやろ。手術、頼むよ。18歳だし、アッペも破けてもいないし、腰椎麻酔だけでいけるよな」

「はい、そのつもりです。あ、先生、搬入は13時50分らしいです。よろしくお願いします」

「おん、わかった、麻酔しといてね」

「任せといて下さい」

そういい残して,もう一度,手術予定の患者さんの様子を見に部屋を出ていった.